
2012.04
第38回 全国名物店員訪問記(1/2)
【著者:行 達也】
90年代に渋谷系を中心としたある種のサブカルムーブメントで都市部を中心に多くのCDショップは単なる小売店に留まらず、情報発信基地として機能しました。そしてこの勢いは都市部のみだけでなく地方にも飛び火したのですが、今回ご紹介する奈良のジャンゴレコードさんもそんなお店の一つです。僕は当時、大阪の大手CDチェーン店で働いてたのですが、ジャンゴさんの評判は届いてて、気になっていたのですが、そのまま東京に転勤になってしまい、結局行けずじまいでした。今回ようやく念願叶ってお話を伺いに行くことができました。
-奈良の音楽事情はどういう感じなんでしょうか?
「とにかくCD屋がどんどん減ってきています。僕が知ってる範囲で県内は個人店のほとんどが無くなってしまったと思います。」
-奈良ってそれなりに人がいるイメージですけどね。
「悲劇的なんですけど、全国の中でも県外への就職率が一番高い県なんだそうです。しかも何十年とずーっと1位らしいです。だから県外消費率も一番なんです。結局、〝寝るために帰る街〝って言われてるんですよ。全国にベッドタウンっていっぱいありますけど、奈良は極端らしいです。」
-なんか寂しい感じですね。
「商売するのには難しい街かもしれません。よく『勤め帰りのお客さんとか来ないんですか?』って言われるんですけど、ほとんどの方が毎日大阪に出てますし、この辺にもあんまり会社がありませんしね。」
-でも、その代わり観光客はすごく多いですよね?
「観光客はもちろん多いです。2008年頃までは、週末ともなれば大勢の観光客が店に来てくれたのですが、近年観光客の来店が劇的に減少しました。今では観光で賑わうのは土産物屋や飲食店くらいでしょうか。僕も店出すときにずいぶん周りから言われましたもん。『こんな場所でサブカル的な店は絶対に成功せえへんよ』って。でも、昔は結構売れてました。2000年代頭ぐらいまでは普通にやってこれましたからね。それまでって、例えば学生さんが社会人になってだんだん奈良から離れていっても、また新しい学生さんが来てくれたものですが、今はそのあとが続かないっていうか、学生さんが極端に減りましたね。」
-ところでこちらのお店はオープン当初から、ある程度音楽性に特化した品揃えだったんですか?
「言いすぎだとは思うんですけど〝最古のセレクトショップの1軒〝と言われることもあります。だからCDバブルのめちゃめちゃ売れてた時代でも小室哲哉やらやらB'zのCDは1枚も置いてませんでしたしね。自分の好みの品揃えでやってたらいつしかセレクトショップって言われるようになったんです。昔はそんな言い方なかったですから。」
-でも、そういう店だったから、周りがどんどん閉店していく中、やってこれたというのはあるんでしょうね。
「おかげさまで、メディアとかライターの人がピックアップしてくれたというのはあると思います。お客さんの中には『音楽人格を形成させてもらいました』とか言ってくれる人もいてます。あと、ミュージシャンでもそう言ってくれる人もいてますね。ちょうど、今30~40歳ぐらいの世代の人が当時、よく通ってくれててそう言ってくれます。」
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