2010.02
【著者:高野 雅晴】
スマートグリッドはエネルギーのインターネットになるのか(1/2)
ユビキタス、クラウドコンピューティングなど、さまざまなIT関連のキーワードが新聞紙面やネットニュース上を賑わしている。米国のオバマ政権発足、さらに国内の政権交代に伴う環境政策促進の流れのなかで、急浮上してきたキーワードが、ITとエネルギーが重なり合う領域のスマートグリッド(次世代電力網)である。
スマートグリッドの構成要素
スマートグリッドとは、電力の流れを供給側・需要側から制御し、最適化できる次世代送電網のことである。従来の送電システムは、大規模な発電所から一方的に電力を送り出すシステムだった。これに対してスマートグリッドは双方向で電力をやりとりできるエネルギーのネットワークである。スマートグリッド導入のメリットは、たとえば下記の4点と言われている。
| 1. | ピークシフト(昼間の電力負荷を夜間に移行させるなど)による電力設備の有効活用と需要者の省エネ推進 |
| 2. | 発電量が天候などに左右され、不安定になりがちな太陽光などの再生可能エネルギーの導入促進 |
| 3. | 電気自動車等の充電インフラ導入促進 |
| 4. | 電力網の安定性向上 |
4点目の安定性については、すでに日本国内の電力網は十分に高品質な電力網を実現できており、オバマ政権がグリーンニューディール政策を打ち出した約1年前は、国内電力会社は、日本ではスマートグリッドは不要であるとコメントしていた。ただし、その後、固定買取り制といった太陽光パネル普及策の実施、自動車メーカによるハイブリッド車や電気自動車、さらに基幹部品となるLiイオン電池に対する巨額な投資計画が発表されるにつれ、風向きが変わってきた。現状では、家庭における太陽光パネルによる発電量の増大やLiイオン電池に対する充電需要が拡大することを踏まえた日本版スマートグリッドが必要になると電力会社も考えるようになった。
インターネット発展プロセスと類似
米国政権が構想をぶち上げ、マスコミが大々的に取り上げ、関連業界の投資が加速する。こうしたスマートグリッドを巡る動きとそっくりなパターンは1990年代前半にも経験している。そのときのキーワードは情報スーパーハイウエイである。当時の米国ゴア副大統領が、光ファイバ敷設等の整備に遅れをとっていた米国の通信インフラ強化策として大々的にアピールした。その当時は通信網の光化では日本が世界で先行していたことも状況は類似している。情報スーパーハイウエイ構想の震源地は米国東海岸であり、登場するプレーヤは、通信キャリアやケーブルテレビ業界であると思われていた。ところが、1990年代半ばにブラウザが登場し、ネットスケープ社が創業される頃になると情報スーパーハイウエイというキーワードはインターネットに置き換わり、主に米国西海岸のIT企業が主役に躍り出ることになった。
インターネットは文字通り、ユーザのネットワーク同士を結びつけるネットワークであり、その連携が拡大することで世界がネットワーク化されるというボトムアップの考え方が基本にある。現状のスマートグリッドの議論で主に注目されているのは電力会社などの動向であり、1990年代前半に通信キャリアの動向がさかんに報道されていたフェーズに相当する。
では、当時のブラウザやネットスケープに相当する動きをスマートグリッドに置き換えるとどうなるのか。この問いに対するコンセンサスはまだ確立されていないが、筆者は一つの仮説を持っている。







