2009.12
第13回 全国名物店員訪問記(2/2)
【著者:行 達也】
-なるほど。商売の基本ですね。最初に引き出しがないと、とおっしゃってましたが、売れ筋というのを把握してるということですか?
「あのね、今、演歌っていい歌が売れるんじゃなくて、自分が歌いたくなる曲が売れるんです。要するに歌の教科書を探しに来るんです。昔だったら例えば水森かおりさんが好きでその曲を買いに来てたんですが、今は別に好きでなくても歌えるから買う、ってことが多いんです(笑)。だから歌の感じの系統を把握しておかないと、お客様が何かを買いに来たときにあともう1枚のオススメができない。そういう意味での引き出しは持っておく必要があると思います。ちなみに難しい歌は売れないんです。自分で歌えないと思ったら買わないから(笑)。だから私は常々、歌い手さんやディレクターさんが来たときには『レコーディングは簡単に歌って、ライヴで本気を出してください』って言うんです。CDやカセットで『あ、これなら歌える』と思わせて、いざライヴになると本気で難しいことをやることで、いい意味で裏切るというか『やっぱりプロは違うな』と思わせることがエンターテイメントだと思うんですね」
-でも、ダンさんみたいに地道に新人の歌手まで応援する店っていっぱいあると思うんですけど、なぜここまでこの店は知名度があって、普段は店に来ないようなビッグな歌手まで来るんですか?(しつこい)
「結局、メーカーさんとかとどういう付き合いをするか?ということになると思います。もちろん店はメーカーにとってのお客様だけど、客だからといって都合のいいことばかり言ってても、良好な関係は生まれないと思います。例えば、そういうビッグな歌い手さんに来て欲しい。サイン会もして欲しい。でもリスクは抱えたくないから、商品は貸し出しで、ってなるかもしれませんが、ウチの場合は『だったら買い取りますよ』って話をするんです。リスクを回避する方向じゃなくて、じゃあその買い取った100本のカセットをどうやって売ろう?っていう発想から始めているので、メーカーさんもその心意気を汲んでくれたりするんですね。もちろん買い取ったら、そう簡単には返品できないワケですから、必死に考えますし、必死に売ろうとします。こういうことが大事なんじゃないかなって思います」
-むむむっ、なるほど。いや、完全に侮ってました。たまたまその地域で少ない演歌専門店が繁盛しているのかと思ってましたが全然違いました。この社長、一見、下町の小さな店の気さくなご主人風ですが、今の音楽市場やら傾向をかなり把握してらっしゃるキレ者でした。この店に人が集まる理由がわかった気がします。配信に関してもしっかりと考えをお持ちでした(ここでは割愛)。この日はダンさんの名物ママさんも途中からお話に加わっていただいて、実は、この遥か倍の量のお話を聞くことができました。が、もったいないので、このあたりで(笑)。気になる方はぜひ一度、店に足を運んでみてください。きっと勉強になると思います。
自分の店もある意味、ポップスの端くれに照準を合わせた専門店で、『こんなジャンルいつかは売れるのかなあ』って不安に思いながら地道にやってますが、もちろんジャンルこそ違いますが、きっと向いてる方向はいっしょなんだと思います。なんだか勇気と希望を与えられた気がします。今回も素敵なショップの方に会えて光栄です。では、また次回!!
【行 達也】
1968年大阪生まれ。長年勤続したタワーレコードを退職後
2004年東京下北沢にmona records(モナレコード)を開店。
CDショップにカフェ、ライブスペースを併設した小さな音楽総合施設を目指す。
http://www.mona-records.com
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