ビデオ屋の矜恃

今年の応募はおととしジョン・ウェイン、去年は三船なので、今年は伝説の女優かなあ・・・と、原節子などを考えておりましたが、南千住では予想以上にヒットしたＤＶＤ『二郎は鮨の夢を見る』にて、主人の小野二郎が「好きにならないとダメなんですよ。自分の仕事に惚れないと」という言葉に感銘をうけ、このお店での集大成としても、ビデオ屋の誇りを見せられるものにしようと決意。というわけで、作っている間に“誇り”から、より深く“矜恃”という言葉に変更し、いま必要とされているビデオ屋を、自分なりに売場で表現してみました。

あいかわらずの柱ＰＯＰなど中段のＰＯＰは心意気ＰＯＰと呼んでいます。心意気ＰＯＰの文字はこんなことが書いてあります。最上段は二郎をリードタイトルにした、誇りをもって生きる人の特集です。残してあったレニ・リーフェンシュタールの映画やピナ・バウシュ、それとアクターズスタジオのＤＶＤをみて欲しいのが目的です。ちなみに大勝軒のＤＶＤは二郎があまりに好評のため、ＣＣＣより追加されたものです。でも出てます。南千住は食いしんぼうが多いのか。真ん中の二郎は別途ご報告の“南千住ごはん映画祭”での特集の為に１本入荷を特別に１０本まで増量してもらいました。導入後モニターといっしょに展開すると大ヒット。もうすでに２００回転いきそうです。それをそのまま移植しました。暖簾の感じと、暖簾から二郎一家が見えるのですが、そのままだと暗いのでさらに裏からライトアップしています。今回一年を通して一番がんばったところです。

今年はとにかく抜き取り予定ＤＶＤを観てから抜こうと、月間約８０本近くを鑑賞。（どれだけ人生を無駄にしたんだと言われましたが）　その中から見どころのあるものだけを厳選していきました。代表は『鳥をみて！』です。見かけは完全に出来の悪い“ふたりエッチ”。通常なら見もせずにさっさと抜くタイトルなのですが、全部観ると決めたので鑑賞しました。正直度肝を抜かれた。面白いうんぬんでなくて、こんなに人に言いたくなるＤＶＤは他にない。ぜったい劇場でも無視され、ＴＶでかかるわけもなく、ビデオ屋でもすぐ抜かれる扱いになる・・・ハズだったタイトルに、こういうものこそビデオ屋が、俺が薦めんで誰がやんのよ！という義憤に似た気持ちにかられました。

そこでずっとそういう商品たまるまで暖めていた“抜取大賞（対象）”コーナーをこちらで展開しました。邦画編ですが。思い入れあるので、ここだけ黄色ＰＯＰでなくて、ここだけ色変えて黒地ＰＯＰにしました。画像はあんまりですが、売場では結構めだちます。４段目以降は、今年入荷して一番うれしかったＤＶＤをご紹介するのと、個別で気になっているがほとんど抜き取りリスト入りしている監督作品をまとめました。

今年嬉しかったのは夏にパックで発注するなかに無理くり旗本退屈男をもぐりこませて入荷できたことと、四畳半襖の裏張りが入荷してたことを、つい最近知ったことです。旗本退屈男は男はつらいよ並みの扱いを受けていいと思っているのですが、まったくＣＣＣでは無視されています。今回はＧＥＯにあったと報告してもぐりこませました。四畳半～は神代辰巳監督の傑作映画ですが、なぜか縁がなくビデオでも自分のお店にあったことがなかったです。しかもポルノ映画ということでどうしても売場の隅っこや１８禁の垂れ幕の奥に行かされたりして不遇なタイトルです。

今回発見しこれは滑りこみで入れねばと観てたら・・その日が元旦であったと気づきました。年の初めから何やってんだ・・オレ・・。南千住の狭い事務所には店長段ボールというのがあり、その中にこっそり抜けないものをリスのようにとってあります。ここではその中から展開。これ本当に全部抜き取りリスト入りなんです。なくないですか？こういうの抜いて他に何おくの？と思います。これが“文化”で“アート”で人の暮らしを楽しく、意味のあるものにできる在庫なのに。ただ目立たないから出ない、古いから出ないという理由では、この南千住店では抜かせません！などという義憤のみのコーナーです。

以上ですが、なんか全体的に抜き取りを嘆くコーナーみたいになったのはご愛嬌か。ただ商品への思い入れはちゃんと売場で表現してあげれば、ちゃんとでます。こちらのコーナー自体はそのままに内容を継ぎ足して、さらにこれからタイトル不足な１～２月がやってくるので、他の場所でも展開し、大型プロモーションかけいきます。ちなみに鳥を見てはもう出ました（ガッツポーズ！）