2018.11
【著者:行 達也】
「METAL」「CrO2」「NORMAL」(1/2)
僕は人と話すのが上手なワケではありませんが、年輩の方と話すのが好きです。それが例え知らない人だとしても。いや、むしろ知らない人と話すのが新しい世界が開けて楽しいのかもしれません。自分より長く人生を送ってきて、それなりの知見を持った先輩の言葉には重みがあります。もちろんすべての人がそうだとは思いませんが「素敵だな」と思われるような考え方を持つには人生のキャリアは不可欠だと思っています。
そんなこともあって、昔っから旅行で地方に行くときには出来るだけ観光地には行かず、土地に住む人と触れ合うことのできる場所を好んで行くようにしています。そんな地元の人と触れ合える恰好の場所が商店街なんです。
都心からちょっと離れた地方都市に行くと、いわゆるシャッター街目前の商店街なんてたくさんあります。そのほとんどの場合は若い人たちが学校を卒業して、上京して、そのまま帰ってこなくて老人しか残っていないような過疎化が進んだ町です。そういう町の商店街には何とも言えない寂しさが漂っていて、それを雰囲気として「なんかいいんだよね」と言い切ってしまうのは無責任というか悪趣味かもしれないですが、僕にとっては、そこでまったりと働く人たちの「昔はよかった」っていうレイドバック感がとても心地よく、それは自分自身も50歳を超えて、そろそろ過去を振り返ってみてもバチは当たらない歳になったんじゃないかな?っていうところから来てるのですが。
敢えて具体的な地名を言いませんが、先日も旅先で周辺の何十件もの店が昼間っからシャッターの閉まっているような商店街で、そこだけ唯一店内の明かりが煌々と付いて目立っているレコード屋さんがあったので思わず足を踏み入れてしまいました。夕方でそろそろ閉店時間かなというタイミングです。
店内には片目を悪くされたであろう歳は75ぐらいのおばあさんが怪訝な表情でこちらを見ているので、すかさず「レコードとか置いてます?」とか元気にどうでも良い質問で『怪しい者ではありません』アピールをしつつ、チラチラと店内を物色しながら中まで入っていくと、店内は案外広くて演歌歌手のポスターが目立つところにズラリと貼ってあって、いかにも地元のお年寄りの方向けにカラオケの教材としてのカセットをメインに売っているという感じです。