2019.2
第82回(2/2)
【著者:行 達也】
―そうですよね。レコード会社も昔と今だったら同じ職種でもやってる仕事内容はずいぶん違うんだろうなって思ってます。平岡さんは今の方がチャンスが転がってる可能性が高いと考えてらっしゃるんですね?
「ホントにそうです。ただ、その頃はプロモーションといえばタイアップありきという時代で、まずタイアップをどうするか?っていうところから話を始めないといけなかったですね。で、逆にそこが決まってさえいれば自動的にお店にはちゃんと並ぶし、ある程度売上は見込めるし、まあ、それが良かったのか悪かったのかっていう感じではありますけど。今は絶対っていうモノがないですよね。そういう意味ではチャンスは平等なのかなっていう気はしています。当時はホントにお願いをしに、頭を下げに行くことが仕事でしたから。自分でがんばってどうにかなるっていう感じではなかったです。今の方が一つ一つをコツコツと積み上げてカタチにしていくことができる時代なんだろうなとは思っています。
―そうですよね。レコード会社も昔と今だったら同じ職種でもやってる仕事内容はずいぶん違うんだろうなって思ってます。平岡さんは今の方がチャンスが転がってる可能性が高いと考えてらっしゃるんですね?
「そう、60年代とか70年代っていわゆるタイアップなんてなかったじゃないですか。もちろんたまたまCMやドラマに使われたっていうのはあったとしても、みんながそこを狙っていくっていう流れはなかったと思うんです。でも、当時の歌で誰もが知ってるっていう歌はたくさんありますよね。だから曲を作って、それを誰かが歌って、コンサートでその曲を聴いた人たちがその良さを口コミで拡げることで長きに渡って売れて行くっていう、そういうのが一番正しい気がしています。で、今はある意味、そこに戻ったのではないでしょうか。そう思えばチャンスはみんな平等で、なんか頑張るっていうことの喜びを見つけられる気がします。」
―タイアップ=金を積んでなんぼ、みたいなもんですからね。
「そうですよね、それが今だと、マスメディア経由じゃなくて大ヒットに繋がることもよくありますよね。だから昔だったらマスメディアに乗れそうもないものは『こんなの絶対売れないよ』みたいに言っていましたが、今はそんなことうっかり言えないです。本当に何が売れるかわからない。」
―ジャドーズに続いてダンス☆マンを担当されて、90年代後半に大ヒットしましたが、この時はタイアップ的な仕込みはあったんですか?
「エイベックスからデビューしたんですけど、あの時はもちろんタイアップなんて取れませんでしたから、じゃあどうやってプロモーションしていくか?ってことについてエイベックスの宣伝担当の方から、全国のクラブを回ろうというアイディアが出ました。それで本当に全国津々浦々回ってきたんです。北海道から九州まで、もうとにかく毎週のようにどこかしら出かけてました。酷い時だと、次にどこに行くかを把握出来てなくて、とにかく空港集合だから朝に羽田に行って、そこで初めて「ああ、今日、広島なのね」みたいに行先を知る、なんてこともありました。逆にいうと、そのときやれることはそれだけだったんです。やらせてもらえることは有難かったです。やらせてもらえることはとにかく全部やる!という気持ちでした。そしてその甲斐あって、地方のクラブDJが気に入ってちょこちょこかけてくださるようになったんです。それが下地になって、徐々にダンス☆マンの知名度も上がって、そんな折につんくさんからモーニング娘。の「ラブ・マシーン」のアレンジの依頼が来て、そこでいろんな化学反応が起こったんだと思います。」
―タイアップに頼らなくても大きく拡げることが出来たっていうことですよね、そんな時代に。
「そうなんです。当時のエイベックスの宣伝の方が本当にがんばってくださって、正に足で稼ぐという感じで一生懸命回ってくれたんですよね。そういう経験もあって、今のタイアップ中心主義でない時代にやり用によっていくらでも何とかなる!っていう確信はあるんです。」
(後編に続く)
【行 達也】
1968年大阪生まれ。長年勤続したタワーレコードを退職後
2004年東京下北沢にmona records(モナレコード)を開店。
CDショップにカフェ、ライブスペースを併設した小さな音楽総合施設を目指す。
http://www.mona-records.com
現在、某CDショップのレーベル部門にて勤務。
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