2018.7
【著者:村松 行人】
コンテンツ大競争時代が来た
⑤消費者争奪へのメディアウォーズ(1/5)
ハリウッドの底力を見せつけた第1四半期
DEG(Digital Entertainment Group)の昨年の米国映像市場の売上データを見ると今年の第1四半期の米国ホームエンタテイメント市場(映画・TVドラマ等の二次利用市場)と、映画館興行市場が揃って好況な様子がうかがえます。
1月~3月のホームエンタテイメント市場は56億7千万ドル、前年同期比8.7%増。パッケージ市場が縮小し配信市場が伸びるというトレンドに変りありませんが、パッケージの縮小率に鈍化が認められます。
映画館興行市場は35億9千万ドル。なんと昨年同期比41%増と近年まれな大躍進ぶりです。「Jumanji: Welcome to the Jungle」「Maze Runner: The Death Cure」「Fifty Shades Freed」「Black Panther」「Pacific Rim: Uprising」等のヒット作品に恵まれたことが高収益の源泉でしょうが、米国の消費者がSVODのTVドラマだけでは満足していないこと、「映画ならではの面白さ」への期待の大きさなども大きな要因ではないでしょうか。Netflix CEOのCEO R. Hastings氏がカンヌ映画祭に執着する気持ちが分かるような気がします。
そのNetflixを始めとするSVODですがL.E.K.(ロンドンを拠点とするグローバル・コンサルティング会社)によれば、米国の全消費世帯5軒の内4軒がいずれかのSVODサービスと契約していると報告しています。
また昨年(2017年)中にケーブルTV視聴者300万人がコード-カット(視聴契約解除)、米国のケーブルTV普及率が80%を割込んだともいいます。
ケーブルTV各社にとってはかなり深刻な事態であるばかりかSVODサービス各社にとってはそろそろ国内市場の頭打ちが懸念されます。
そしてSVODサービス各社のもう一つの悩みは視聴者の「新作映画」への欲求不満です。ハリウッドレポーター紙によれば、Netflix社の契約者数は2018年3月現在グローバルで1億2,500万人と言われますが、Netflix一社でこれだけの視聴者が「新作映画が観られない!」という欲求不満を感じているわけですから、その受け皿として前回書きました新作映画のオンデマンド配信Redbox on Demandの存在感が高まっているというわけです。SVODサービス各社の対応策として考えられる事といえばハリウッドのメジャースタジオを1, 2社買収して劇場映画をダイレクトに配信するなんてことでしょうが、そう簡単ではありません。
ということでNetflix等SVODサービスの当面の取り組み戦略は①優れたオリジナル・コンテンツ制作への投資と、②それに歩調を合わせた新規契約者獲得へのグローバル・マーケティング以外に見当たりません。オリジナル・コンテンツへの今年のNetflixの投資予算は80億ドル、グローバル・マーケティングへの予算は20億ドルで合計100億ドル(約1兆円)と投下資金は膨大です。