2018.10
【著者:村松 行人】
コンテンツ大競争時代が来た
⑧多様化するコンテンツ・ビジネス(1/5)
Amazonが映画館チェーンの経営に進出
先日、日経新聞がAmazonの株価総額がアップルに次いで1兆ドル(110兆円)を、年商も約20兆円を超えたと報じていました。
ご存じの通り同社の事業内容はクラウド・サービスからリアル店舗の食品スーパーまで、驚くほど広範多岐にわたっています。8月にはそのAmazonが「映画館チェーンを買収」という情報がブルームバーグから流され日本でも話題となりました。
買収対象は「Landmark Theatres」というチェーンで、ニューヨークやロサンゼルス、サンフランシスコ等米国の大都市の一等地に52の映画館・252スクリーンを展開しているとか。インディーズ作品や外国映画の上映にも力を入れていることで有名だそうです。
AmazonがLandmark Theatresを買収する目的は何か。それは同社が展開している様々な映像コンテンツ関連の事業を俯瞰すると明らかです。DVDやBD等パッケージのオンライン通販、映画やドラマ等の映像データのオンデマンド販売、Amazon Primeの会員を対象とするSVODストリーミング・サービス等はご存知の通り。
それに止まらず、同社はここ数年アマゾン・スタジオを拠点に劇場映画やTVドラマの制作に力を入れています。昨年は『マンチェスター・バイ・ザ・シー』と『セールスマン』の2作品でアカデミー賞の主演男優賞・脚本賞と外国語映画賞を受賞して注目されました。
先般Amazon Primeの有料会員数が世界で1億人を超えたと発表されました。内、米国内約9,000万人(日本約300万人~)とか。サービス内容や業態が異なりますから単純な比較は意味がありませんが、Netflixは今年8月現在で世界の会員数が約1億2500万人、様々なデータから米国内では6,500万人程度と推定されます。そうであれば既に米国内ではAmazon Primeの会員数がNetflixの契約者を上回っていることになります。
それはともかく、SVODと映画館での新作映画鑑賞サービスを組み合わせれば、Netflixその他のSVODの競合ライバルとの大きな差別化が実現します。
また映画館チェーンを持つことで自社作品の公開機会を確保出来るだけでなく、次期アカデミー賞の選考に有利なタイミングで自社作品を公開するといった操作も可能です。さらに他社作品の興行権の買取交渉が有利になる、といったメリットもあります。
映画館興行売上はNetflixやAmazon Prime Video等のSVODサービスの普及もあり伸び悩み、往年の華やかさは失われつつあるようですが米国の人々にとって劇場の大きなスクリーンで観る映画はかけがえのないエンタテイメントであることに変りないと思います。
そうであればAmazonにとって映画館チェーンの経営はプライム会員へのサービスも含め様々な映像コンテンツ事業の一環として是非手掛けたいもう一つの関連事業ではないでしょうか。