2018.10
【著者:村松 行人】
コンテンツ大競争時代が来た
⑧多様化するコンテンツ・ビジネス(3/5)
狙いはAmazon Prime会員増強と囲い込み
よくAmazonの市場戦略は「グローバルなオムニチャンネルの展開によりあらゆる分野のシェア独占への野望」といった論評を目にします。その是非はともかくAmazonの事業戦略のもう一つの狙いは「世界規模でのAmazon Prime会員の増員と囲い込み」であることは間違いなさそうです。同社が展開する様々な事業を安定的に拡大してゆくための基盤として、世界規模での支持者層(Amazon Prime会員)の確保・増員を目指しているのでしょう。
Amazon Prime会員の囲い込み戦略は同社が展開するリアル店舗のAmazon Booksの極端な会員優遇サービスにも見られます。
Amazon Books ではPrime会員には購入する本を価格の半値近くまで割り引いています。一例では100万部以上のベストセラー詩集「milk and honey」の価格は$14.99ですがPrime会員価格は$8.99で約40%程度のディスカウント。特例ではなく殆どの本が同程度の割引率のようです。支払いもPrime会員アプリをスキャンするだけでOKです。同様に買収した食品スーパーのWhole Foods MarketでもPrime会員は定価の5%引きの他、店内各所に「Prime会員は10%ディスカウント」の札を下げた食品が置かれているといいます。
もう一つAmazonの市場戦略として見逃せないのが様々な分野へのリアル店舗展開です。Amazonの社是は「顧客中心」ですが、同社にはネットサービスだけでは消費者ニーズの全てを満足させることは不可能という強い認識があるようです。また、食品市場等のようにオンライン・コマースに馴染まない分野もあります。オンライン上のビッグデータだけでなく消費者に近い所で活きた顧客データを集める必要性も感じているのでしょう。
ということでAmazonは一昨年あたりから無人スーパーのAmazonGO、Amazon Booksの出店、高級食材スーパーの365 by Whole Foods Marketの買収、今年4月には米国の最大手家電量販店ベストバイとの販売提携と、リアル店舗展開を積極化しています。この先も家電や家具のリアル店舖を計画中とか。
しかし各分野への出店テンポは意外に緩慢かつ慎重、メディアが報道しているような積極的な多店舗展開ではありません。実際に手掛けてみてリアル店舗への出店が手間、ヒマ、資金がかかる割りに儲からないという経験則かもしれません。全米に300~400店舗のチェーン展開をする計画だったAmazon Booksの昨年の第3四半期の決算は(12店舗を出店した段階で)利益ゼロと発表しています。
2018年9月現在、Amazonが出店したリアル店舗の現状は買収したWhole Foods Marketの492店はそのまま、Amazon GOが4店舗、Amazon Booksは18店舗といいます。