2018.10
【著者:村松 行人】
コンテンツ大競争時代が来た
⑧多様化するコンテンツ・ビジネス(4/5)
Amazon.comのリアル店舗作りに学ぶ
Amazon Booksの売上実績にも関連していると思うのですが、問題は同社のリアル店舗経営への戦略です。例えばAmazon Booksですが店舗面積は350~750平米とあまり広くありません。問題はその棚に並ぶ在庫作品数が3,000~5,000タイトルといいますから驚きです、これまでの書店では考えられない少なさです。棚に並ぶのはオンラインショップで4つ星以上の売れ筋作品のみ。徹底した売れ筋作品への絞り込みは、従来の店の常識では20,000~30,000作品ですから真似の出来ない荒業に見えます。
食材スーパーWhole Foods Marketでも約30,000品目あった取扱い食品を8,000点に絞り込んだといいますが、出来る限り幅広い作品を在庫して顧客満足度を高める、というのが書店経営の原則ですからその逆を行くAmazon Booksの対応は「本当にこれでお客様に満足して頂けるのか」「お客様に飽きられてしまわないか」「そんなオンライン商法がリアル店舗に通用するのか」などなど心配です。
しかし、こうしたAmazon Booksの店作りや販売促進ツールの作り方にはオンラインならではの様々な工夫やアイデアもあって参考になることも少なくありません。首を傾げたくなることも色々ありますが。
①すべての本を面陳列する
棚の本は全て面陳、しかも手に取りやすく、ということで本と本の間には必ず2~3cmの間隔を取っています。オンライン・ショップのホームページを見ているような感じのディスプレイだとか。殆どの本にカスタマーレビュー(投稿された読者の感想文)を紹介したPOPが添えられている。
②徹底したレコメンドPOPやディスプレイ
オンラインショップのデータを駆使して売れ筋作品の読者層の分析や情報を集め加工してレコメンドしている。
・「この本を読んだ人はこんな本を買っています」
・「If you Like←You'll Love→」
・「死ぬまでに読みたい100冊の本」「100冊のミステリー」
・「ロサンゼルス(ご当地)でベストセラーのノンフィクション」
・「Amazon.comで最も読みたい本と希望が多かった本」
・「カスタマーレビューが1万件を越えた本」
・「スタッフの○○がこの本を是非!とお勧めしています」
・「92%のレビュアーが5つ星以上を付けました」
・「ハードカバーの新刊書、アマゾンポイント4ツ星以上の本」
③キッズ・コーナーに力を入れている
・「座ってキンドルで本が読めるコーナー」を設けている。
・「子供にも両親にも喜ばれるプレゼント用の本」
・「子供時代にぜひ出会っておきたい100冊の本」
→星の王子様、エルマーのぼうけん等のロングセラーも
・「年齢別(1歳ごと)のお薦めコーナー(棚)」
・「販売実績、人気度、そして私共の好みから選んだ子供の本」
・人気キャラクターのぬいぐるみ等も販売している。
④Kindleの読者が何をどう読んでいるかのデータからのPOP
・「読み始めたら止められない本」「読みだしたら置けなくなる本」
・「読み始めから読了までの時間が短い本」
⑤丁寧でフレンドリーな接客応対
・スタッフが気さくにフレンドリーに声をかけてくる。
→米国の店では書店以外の店でも珍しいこと。Amazon Prime会員の勧誘プロモーションが目的か。
本が売れなくなりリアル書店が次々に閉鎖している状況は日本も米国も変わりません。Amazon Booksの多くの店舗が出店している立地は破綻した米国第2位の大チェーンBordersの跡地や近隣です。この先Amazon Booksも採算的には厳しいかもしれません。
【村松 行人】
田辺経営(株)、教育出版(株)を経て現代教育企画設立。
1986年、ビデオショップ経営研究会を主催。
全国550余のビデオレンタル店の経営診断・主導をしている。
衛星放送・スカイパーフェクトTV Eチャンネル番組審議委員長。
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