2018.9
【著者:行 達也】
CDというメディアについて(1/2)
CDというメディアについて、これまで散々お話してきました。2000年あたりをピークにその後、衰退の一途を辿るであろうと。
2010年にはもはや、その存在すら危ぶまれたCD。僕自身もこの業界に身を置いてるからこそ、その危機感は常に持っていましたから、毎年、年末になると「ああ、今年もまだCDあったなあ」とホッとしていたものです。それでも、もう片足は棺桶に突っ込んでいる感覚だったので、なんとなくビビりながら静観していましたが、衰退の糸口は購買層の世代交代が引き金になると信じて疑いませんでした。
つまり、メディアの変遷でダウンロードやストリーミングの配信がスタンダードになっていく中で、スマホが生命線の若い世代にとって「パッケージって何?CDって?」というのは当然の流れで、下から消え、そしてモノとして所有することで満足感を得ることができる上の世代だけが、CDやレコードを買い続けていくんだけど、趣味嗜好がだんだん保守的になっていき、昔からよく聴いてる数枚のCDだけで満足するようになり、いずれ買うこともなくなるであろうと。そんな風に占っていました。割と本気で。
では、現在どうなっているかというと、まったく予想とは別の事態になってきていることに気が付きます。10代から20代がメイン客層のジャニーズやK-POPがCDチャートの上位を占め、現在のパッケージ市場を支え(もちろんAKB等の女子アイドルを支えているおじさん層というのもありますが)、一方でボクの周辺の同世代の人たち(40~50代)が続々とCDやレコードを売りに走り、サブスクリプションに切り替えていくという現象が起こっています。
ただ、これらの一つ一つの現象というのは理由を手繰り寄せてみると、別に不思議でも何でもなくて、至極当たり前な帰結だったりするんですね。若い子たちにとってYouTubeや無料音楽アプリを通して「音楽はタダで聴くもの」という概念がはびこりつつある一方で、音楽だけでなくビジュアル的にも楽しめるパッケージで欲しい、だったり、パッケージで買うことでサイン会などの特典が付いたりと、パッケージが危惧され始めた当初、目指していたことがしっかりと達成しているんですね。あと、本当に好きなアーティストの作品はちゃんとCDで欲しいっていうのは今回の安室奈美恵の一連のバカ売れで見事に証明されました。この感覚はしっかりと日本人の感性に根付いている印象を受けました。反対に、エルダー層にとって、所有欲を満たすこと以上に断捨離せざるを得ない住宅事情がCDやレコードを売りに走らせているんですね。もはや思い出はハードディスクの中に保存することで納得するようになってきたというか。