2019.1
【著者:村松 行人】
パッケージのサバイバル戦略
①頑張る米国のレンタル・チェーン(3/4)
今どきのレンタル店サバイバル戦略
Family Videoは典型的な地域密着小規模レンタル店です。「大手チェーンの経営戦略とFamily Videoの戦略には殆ど共通点がないので怖くなかった」とフーグランドさんは語っています。
日本でも現在では多くの地域で競合店の淘汰が進み地域を独占する経営環境となっていることを考えれば、同チェーンの経営戦略は一見時代遅れではありますが、むしろ「これからのレンタル店の生き残り」への参考になることが多いと思います。
①同チェーンの経営のポイントは売上の最大化ではなく、「最大限の純利益確保」のようです。フーグランドさんから見ればRSS仕入れは折角の売上をスタジオ各社と折半しなければならず「もったいない」契約ということになります。ということで仕入れは全て買取仕入れのようです。
②Family Videoの出店戦略は当初から大手チェーンと競合しない農村部や地方の小都市狙いでした。そうした立地の多くが大手と競合しないだけでなく、高速インターネットへのアクセスが制限されていたり、Redbox On DemandやNetflix、Amazonなどのデジタル・サービスになじまない人たちが多いといいます。結果的にビデオ屋さんに行かなければ新作映画は見られない立地条件ということでもあります。
③NBC WYFFテレビの画像からも感じるのですがFamily Videoの賑わいは一昔前の田舎のビデオ屋さんを思い出します。店員さんはお客様の顔を全部知っていて一人一人に声をかけています。フーグランドさんは「週末の夜に来れば店舗の忙しさに驚くでしょう、人々は会話が大好き、Family Videoは地元の喫茶店のようなものです」と語っています。
④上記WYFFの番組ではFamily Videoのスタッフが「ノスタルジア(nostalgia)は店がお客様に提供しなければならない大きい役割です」とコメントしていてその意味がよくわからなかったのですがフォーブスの記事を読んで同チェーンがひと昔前の地域密着型の取組みをしていて、そんな店に期待する地元の映像ファンがまだまだ多い、ということではないかと理解できたような気がしました。
⑤またFamily Videoは全ての店舖が自社物件だそうです。大都市に比べ安価に土地や不動産が確保できること、家賃支出が発生しない、物件の一部を使って傘下のピザ・チェーン等を出店する、売上不振店は規模を縮小して空きスペースを賃貸物件にする、といった自社物件ならではの自在な不動産活用で収益を得ているようです。フォーブス誌は同チェーンの不動産の価値を7.5億ドルと推定しています。
⑥そしてフーグランドさんが上記以上に重要と強調するのが殆どの新作映画が映像配信に先駆けてパッケージ・リリースされるという事実です。新作映画の品揃えならNetflxに負けません。こうしたレンタル店ならではアドバンス・メリットをしっかりお客様にアピールすることの大切さを強調しています。