2019.3
【著者:村松 行人】
パッケージのサバイバル戦略
③動画配信では観られない映画(1/4)
パッケージ・メディア存続への再認識
前回はウォルト・ディズニー社が今年後半から新しい動画配信サービス(Disney+)に参入することで米国の映像市場の競争激化とNetflixの独り勝ち時代の終わり、さらにパッケージ市場の一層の後退懸念について書きました。
そのレポートと前後して、米国の業界誌「Media Play News」にもほぼ同じ視点でパッケージ(Physical Media)市場の縮小を危ぶみ、活性化への業界ぐるみのキャンペーンの実施を提案した記事が掲載され興味深く読みました。
記事のタイトルは「Not on Netflix」(ネットフリックスにはないもの)とシンプルかつ明快。Netflixのコンテンツに新作映画が少ないという最大のウイークポイントを突き、Disney+やその他の新しい動画配信サービスの出現がストリーミング市場の勢力図を塗り替えるだろうという予測と、パッケージをないがしろにしがちなメジャースタジオ各社への警告、映画産業を持続する上でPhysical Media市場での収益確保の重要性を力説していました。
これまで多くの消費者にとって劇場で見逃した新作映画はパッケージを買うかレンタルで観るのが最も身近で簡単な方法でした。しかしこの先はその新作映画までを(メジャースタジオ系の)配信サービスに依存するようになるのではと心配になります。でも同誌の記事では、殆どのスタジオがこの先も新作映画は配信前にパッケージリリースするだろうし、その新作映画を楽しみにしている消費者もまだ確かに存在しているのだから、この機会にスタジオ各社、中間業者、小売業者、レンタル店、その他、業界全体でのPhysical Mediaプロモーション・キャンペーンを実施したらどうかという呼びかけです。
残念ながら最近はスタジオ各社幹部のPhysical Mediaへの関心はあまり高くありませんからキャンペーンの実現は難しいでしょう。しかし、日本に比べ米国では4Kテレビや次世代UHD BD等の普及が進んでおり、人々のパッケージでのホームライブラリーへの意欲も衰えていないようですからキャンペーンを実施すればそれなりの効果はあると思うのですが・・・。
ということで米国はいよいよ本格的なDirect to Consumerの時代に突入する気配が濃厚です。しかし同誌によればダイレクトに映像を消費者に届けるこれまでの映像配信サービスは「食べ放題ビュッフェ(バイキング)」のようなもので、消費者がメニューの中から自分が食べたい一品を選ぶのとは違う、と指摘しています。
こうした市場大変化の時代だからこそ、パッケージ復権のチャンスがあるとする同誌の考えは正しいかもしれません。
Netflixのコンテンツには少ない新作映画やブロックバスター映画を網羅した、映画館の興奮をそのまま家庭に持ち込む粒よりの一品料理をレコメンドする、といったパッケージならではの戦略構築が必要な時代が来ているのではないでしょうか。
また、周辺の様々な消費市場ではリアル店舗のネット通販への存亡を賭した反撃が始まっています。