2018.10
第80回(2/2)
【著者:行 達也】
―そういうビジネスセンスは飲食店経営で磨かれたものなんですか?それとも本格的にやっていたバンド活動?店やってる時も氷にこだわって氷屋にわざわざ買いに行ったりとか只者でない雰囲気は充分あるんですけど(笑)バンドも本格的にやるとなれば一つの組織で、言ってみれば会社みたいなもんじゃないですか。
「実はボクが福岡で高校の時から一緒にやってたバンドのメンバーが志半ばで亡くなったんです。本当はバンドで福岡で成り上がるつもりだったんですが亡くなっちゃったんで、もう本当に途方に暮れて、大学を卒業して1年ぐらいフラフラしてたんですよ、悲しすぎて。で、1年経って気付いたんです。『生きてるっていう選択があるんだ』っていう。コレを音楽で伝えようと思って、そこから上京するんですが、そこで始めたメンバーとはウマが合わなくて、結局一人になってしまったので、じゃあ何をやったかというと営業を始めたワケです。バンドの出会い系ってあるじゃないですか。それでいろんな人と会いまくって、スタジオに一緒に入ったりしたんです。新しいバンドメンバーを見つけるために。そういう突き動かされた行動力って後の仕事に大きく影響してると思ってます。目的に対して手段探して、みたいな。」
―じゃあバンドメンバーを探すための行動で社会の仕組みを知っていくことになったと?
「自然とそうなって行ったんだと思います。自分を売り込んで、いいメンバーを見つけて、活動する中でCDを作って、それを売っていくっていう。その傍らで飲食店っていうまた一つのステージを作っていくわけです。」
―じゃあ、どっちも役に立ってるワケですね?
「今、思えばそうですね。でも本当に最初に店を始めた頃って、当然なんですがお客さんゼロなんですよ。しかも4階建ての雑居ビルの3階(笑)それを来てもらうようにして、さらにリピーターになってもらうためにどうすれば良いのか?ブランディングっていうのをそこで学びましたね。例えば音楽だと、このバンドってどういうのなんですか?ハードロックです、っていう。この店はどんな店ですか?女性が一人でも入りやすい店ですっていう特徴ですよね。それに合わせた店作り。BGMとか。」
―なるほど。籔井さんにとっての行動規範っていうのは一人で判断するものなんですか?
「結果的には後輩とかに支えられてっていうのはありますが。基本的にはそうですね。親友の死を経験したことで『生きてれば選択できるっていう自由があるんだ』っていう壮大なことに気付いてからは、なおさら芯が出来たのかもしれません。例えば、今、仕事を突然辞めて『よしっ、海外に行こう!』と思ったら行けるワケじゃないですか。それに気付けたことが人生の中で大きかったかもしれません。」
後半に続く
【行 達也】
1968年大阪生まれ。長年勤続したタワーレコードを退職後
2004年東京下北沢にmona records(モナレコード)を開店。
CDショップにカフェ、ライブスペースを併設した小さな音楽総合施設を目指す。
http://www.mona-records.com
現在、某CDショップのレーベル部門にて勤務。
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