2018.9
【著者:村松 行人】
コンテンツ大競争時代が来た
⑦転換期を迎える米国の映画興行市場(2/5)
MoviePassは映画興行界のNetflixという説
米国では株価の暴落を期にMoviePass社の危機説や噂が飛び交っていますが、CEOのミッチ・ロウ氏も親会社のHelios and Matheson社も強気です。8月16日には同社の破綻危機説を報道するメディア各社も招いてMoviePassスタート1周年を祝いました。
多くの映画館チェーンが反発しているとはいうものの、MoviePassは全米の映画館の91%(約4,000館)で使用可能、MoviePassが映画館に支払うチケット代は全米映画館売上の5%に達し、既に無視できない大きな存在となっています。財務指標的にはいつ破綻してもおかしくないと言われるMoviePassですが、しぶとく生き残り映画興行市場を変えてゆくのではないかと思えてなりません。
最近、ニューヨークやLAでは夕方からの映画館入場料は$15前後するそうです。従ってMoviePassの月額料金が$15となり多少の利用制限が付いたとしても月3本の映画が見られれば利用者にしてみれば「悪くない」サービスではないでしょうか。8月に発表されたサブスクリプションの先輩Netflixの月額料金値上げも追い風です。
MoviePassの先行きの成否は別として、同社が持ち込んだサブスクリプション(定額会員制度)が今後の米国映画館ビジネスを変えて行くことは間違いありません。Netflixの成功を下敷きに、MoviePassの月額見放題サービスは間違いなく米国の消費者の心を捕らえたと思います。
MoviePassと競合する類似サービスが色々登場していることにも注目です。同社のサービスに最も批判的だった全米第2位の大手映画館チェーンのAMCシアターズ(約400館)が始めた「AMC Stubs A-List」は月額$19.95で週3本、3DやIMAXもOKという内容で話題になっています。また同じく映画館チェーンのアラモ・ドラフトハウスはニューヨーク地域限定で定額会員制のサービスを導入するといいます。Sinemiaは映画館チェーンではありませんが月額$9.99で、月2本、3DやIMAXもOK、ファミリーサービス料金を重視してて好評等々、他にも色々あるようです。
前にも書いた通り同社のCEOミッチ・ロウ氏はサンフランシスコのビデオ・レンタル店からスタートして映像ビジネスの最先端を歩んで来た人だけに個人的には何とかこの難関を切り抜け、新事業が軌道に乗ることを願っています。しかしMoviePass社の先行きは全く不明、このコラムが皆さまの目に届く前に決着がついているかも知れません。