2018.12
【著者:村松 行人】
コンテンツ大競争時代が来た
⑩強まる映像配信への流れの中で(4/4)
市場挽回へリアル店舗ならではの取組み方
こうしたテレビ通販やネット通販等デジタル市場のマーケティング戦略に対抗して、レンタル店にも「リアル店舗ならでは」の新たなマーケティング戦略の再構築が必要なのではないでしょうか。
リアル店舗の難しさは、テレビ通販やネット通販と違い顧客層のセグメントが難しいことです。いやでも来店する幅広いお客様層を対象とせねばなりません。
リアル店舗ならではのマーケティング戦略への第一歩は①来店する幅広いお客様層をきちんとカテゴライズする。②それぞれのお客様特性を把握する、の2つの作業ではないでしょうか。こうした情報をきちんと把握することでそれぞれのお客様にどう向き合うか、お客様のニーズに対応した仕入れやサービスはどうあるべきか、が明らかになり、セールス・プロモーション戦略、陳列・店内レイアウト等々の方向性が見えてくると思います。
先日見た近くのTSUTAYAさんの「ジブリがいっぱいcollection」コーナーは在庫作品がよく回っていました。いうまでもなくジブリ作品はアニメ・コーナーの定番商品ですから何処に置いてもそれなりに回転しますが、作品特性としては「親子で相談しながらどれを観ようか作品を決める」「親が子供や家族で楽しむために借りる」といった動機からのレンタルが明確ですから、そうした特性、つまり「誰が借りるのを決めるか」「同じ作品が繰り返し家族で観られている」といったことを踏まえたコーナー作りをすることで、より高回転を実現することが可能となります。私が見た店舗では、目線正面の棚4段を使い、以前と比べ在庫を思い切り増やして並べていました。見た目ですが回転率は現在の方が高く、かなり貸出中の空箱が並んでいました。
こうしたTSUTAYAさんの実践例とは別にもう一つ、これからのレンタル店生き残りへの重要な問題があります。それはようやく本格化してきたDVDからBDへのパッケージ・シフトです。BDへのシフトの実態については次回に詳しくレポートしますが、シフトが本格化すれば間違いなく、いち早くBDを制した店が市場を制することになるでしょう。その前にとりあえず「主として誰が今BDを借りているのか」を知り、地域のBDのお客様をしっかり囲い込むことは重要だと思います。BD再生機も、ゲーム機も4Kテレビ受像機も売行き好調のようです。
米国にはBDのお客様はDVDのお客様に比べ①来店回数が多い、②レンタル枚数が多い、③客単価が高い、といった調査データがあるといいます。日本のレンタル店も「BDレンタルのお客様」というカテゴリーで分析すると色々今後の販促のヒントが得られそうです。
今年はBDソフト発売から満10年目、米国では今年になって初めてBDソフトの売上がDVDを上回りました。冒頭の『SCORPION/スコーピオン』の台詞ではありませんが人々のパッケージやレンタルへの思いは想像以上に根強いものがあることは間違いなさそうです。
次回はBDとパッケージの強さについて考えたいと思います。
【村松 行人】
田辺経営(株)、教育出版(株)を経て現代教育企画設立。
1986年、ビデオショップ経営研究会を主催。
全国550余のビデオレンタル店の経営診断・主導をしている。
衛星放送・スカイパーフェクトTV Eチャンネル番組審議委員長。
顧客満足度で勝負! 最近のバックナンバー
- コンテンツ大競争時代が来た ⑨変わりつつある映画館興行ビジネス(2018年11月)
- コンテンツ大競争時代が来た ⑧多様化するコンテンツ・ビジネス(2018年10月)
- コンテンツ大競争時代が来た ⑦転換期を迎える米国の映画興行市場(2018年09月)
- コンテンツ大競争時代が来た ⑥根強い存在感を発揮するパッケージ(2018年08月)
過去一年分のバックナンバーをご覧頂けます。 バックナンバー アーカイブへ