2018.11
【著者:村松 行人】
コンテンツ大競争時代が来た
⑨変わりつつある映画館興行ビジネス(5/5)
興行市場活性化へパッケージの重要性
③の映画興行市場の活性化へ向けてパッケージ市場の存続と活性化が重要な理由はいうまでもなく映画の二次利用市場としてのパッケージ市場の存在感であり、その収益です。
入場料金が安くなり映画館がより楽しく快適な場所になれば観客が増え、お客が増えれば売店売上も増え儲かります。こうした好循環を持続するためには良質な映画がコンスタントに映画館へ配給されねばなりません。そのために不可欠なのがメジャースタジオその他の制作者の映画製作への投下資金の回収と利益の確保です。
これまでパッケージ市場は映画の二次利用市場としてなくてはならない存在として機能してきました。しかし映像配信市場の拡大につれてディスクが売れなくなり、その重要性がないがしろにされているというのが現状です。
問題は配信市場が拡大したとはいえ米国でも現状はNetflixやAmazonなどのSVODのストリーミング市場が拡大しているだけでスタジオ各社が期待している映画の二次利用市場としてのEST市場はさほど機能していないというのが現実。ハリウッドにとってパッケージ市場はまだまだ投下資金の回収と利益確保になくてはならない存在であることは間違いありません。
もう一つ、米国の人々が好きな映画を繰り返し観る習慣があることと、多くの映画好きがホームライブラリーのコレクションに夢中になっていることを書きましたが、こうした目的なら映像配信よりもパッケージの方が向いていることは言うまでもありません。これからのパッケージ市場にはこうしたニーズに沿ったマーケティングや店作りが有効なのではないでしょうか。
映画館チェーンとタイアップして売店に魅力的な新作DVD・BDのセルコーナーを設けるのも良いと思います。上映作品の関連作や出演俳優が出ている作品をアピールする、映画館以外では入手できない関連グッズやフィギュアを売ったりプレゼントする等、取組み方次第でパッケージ市場の活性化は可能だと思います。次世代4K対応ウルトラHDBDも本格的に売れ始めたようです。
米国ではメジャースタジオの一部がEST市場の拡大を急ぐあまり作品の劇場公開からパッケージ発売までのウインドウ期間を撤廃して公開後の即配信を考えているようですが、そうだとしてもEST市場拡大は期待出来そうにありません。無駄な努力だと理解すべきです。
【村松 行人】
田辺経営(株)、教育出版(株)を経て現代教育企画設立。
1986年、ビデオショップ経営研究会を主催。
全国550余のビデオレンタル店の経営診断・主導をしている。
衛星放送・スカイパーフェクトTV Eチャンネル番組審議委員長。
顧客満足度で勝負! 最近のバックナンバー
- コンテンツ大競争時代が来た ⑦転換期を迎える米国の映画興行市場(2018年09月)
- コンテンツ大競争時代が来た ⑥根強い存在感を発揮するパッケージ(2018年08月)
- コンテンツ大競争時代が来た ⑤消費者争奪へのメディアウォーズ(2018年07月)
- コンテンツ大競争時代が来た ④踏ん張りどころのパッケージメディア(2018年06月)
過去一年分のバックナンバーをご覧頂けます。 バックナンバー アーカイブへ